2023/08/04

引っ越した。

8月1日夕方、不動産屋で鍵を受け取りアパートまでキャリーケースを引きずりながら30分ほど歩いた。途中、24時間営業の狭いコインランドリーや素敵な喫茶店を見かけた。マップ通りに歩いているとやけに細い道に案内された。高い木が何本もあって蝉の声が響いた。なんだか懐かしい匂いがした気もするが、こういうのはロマンを欲しがっているだけで大抵作り話だ。アパートに着くと鍵を開けて部屋に入る。あまり新鮮な気持ちは無くとりあえず部屋の動画を撮って友人に送った。ガスの開栓が翌々日だったのでその日は銭湯へ行った。グーグルマップを開き目的の銭湯への経路を調べる。途中薬局へ寄りシャンプーとリンスと洗顔を買った。私はあまりヘアケアをしないのでいつも一番安いものを買う。だが引っ越しを理由にいつもより少し、いや、3倍ほどの値段がするシャンプーとリンスを買った。買った後になんだか後ろめたくなって友人に調子に乗っていいシャンプーを買ってしまったとメッセージを送った。そうすると“引っ越し祝い”とだけ返信が来た。やけに納得して心が軽くなった。きっと私は私にいいシャンプーとリンスをプレゼントしたかったのだ。銭湯は思ったより距離があったが初めての街を散歩するのにちょうど良かった。入浴料はサウナ別で520円だ。少し高いなと思ったが、一ヶ月に一回は来れたらいいなと思った。中には私以外に3人いた。お風呂に浸かる前に頭と体を洗う。買った金木犀の香りのシャンプーをドキドキしながら使った。金木犀なんて私にはまるで似合わないなと思ったが、私はいつだってそうだった。お風呂の温度はそれなりに熱く、なぜか父親のことを思い出した。お腹が空いていたので15分ほどで出た。新品の花柄の可愛いパンツを履いた。帰るとき女将さんがおやすみなさいと言ってくれたので嬉しくて上を向いて歩いた。